部長とあたしの10日間
日曜 11:00
カーテンの隙間から漏れる日差しと、鼻をくすぐるコーヒーの香りに、あたしは目を覚ます。


眠い目を擦りながら体を起こすと、あたしはふかふかのベッドの上で、柔らかい毛布にくるまっていた。


もう朝か、なんて腕時計に目をやると、針は11時を指している。


もう昼じゃない!
ていうかそもそも、ここどこ?
見覚えのない部屋で辺りを見回すものの、しばらく状況が掴めない。


毛布の中を確認し、乱れてはいるものの洋服をちゃんと着ていることにホッとする。
ひとまず、記憶がないまま裸で朝を迎えるなんて過ちは犯さずに済んだ。


えーと…。
まだぼんやりとした頭をフル稼働させる。


昨日は確か部長に会うために会社に行って。
夜は偶然居合わせた後藤さんも一緒にみんなで飲みに行くことになって…。


だんだんと記憶が甦ってくる。


そうだ。
あたしは急用のできた後藤さんの代わりに、(たった一杯で)酔い潰れてしまった部長を家まで送り届けて…。


となると答えは一つしかない。


ここは間違いなく部長の部屋で。
どうやらあたしは、あの後眠ってしまったところを、部長にベッドに運んでもらったようだ。


あのタワマンの一室ならば、あたしの生活水準とかけ離れた高級そうなベッドや毛布にも納得がいく。
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