部長とあたしの10日間
「───それ飲んだら行くぞ」


部長は上着を羽織ると、車のキーを掴んで言った。


「行くって…」


「決まってるだろ、お前の家だ」


あたしの家は都心にある部長の家からは距離があるし。
通勤定期の範囲内でもないから、家まで送ってくれるのはもちろんありがたいんだけれど。


今日は日曜日だし、上手くいけばもう少し一緒にいられるかも、なんて期待が外れて少しがっかり。


部長の部屋に居座れるはずはないけど、このまま何もせずに帰るのは名残惜しい。
しぶしぶ車の助手席に座って、平然と運転席に乗り込む部長を見つめながらそう目で訴えていると。


「───そんなに見るな。
気が散る」


運転の邪魔になるからか、部長はあたしの頭をそっと掴んで正面を向かせた。
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