部長とあたしの10日間
部長に頭を触られてしまった…。
思いがけないご褒美に機嫌を直したあたしを見て、部長は呆れた顔をする。


「単純なヤツ…。
───全く、こんなオッサンのどこがいいんだか」


あれほどハイスペックな中身と外見を持ってるくせに女の影がないのは、この口の悪さが原因かしら。
絶対に部長のこといいなと思ってるのはあたしだけじゃないはずなのにな。


「───このまま、どこか一緒に行けたりしませんか?」


小一時間も経たずあたしのマンションに着いてしまった後。
離れがたくて中々降りようとしないあたしを見て、部長が溜め息混じりに言う。


「その服で行く気か?
人目を気にするお前の台詞とは思えないな」


痛いところを付かれてあたしは黙る。
確かに、そのまま寝てしまったことが一目でバレそうな、皺だらけのこの服で出掛けるのは抵抗がある。


「───脱がしてくれても良かったのに…」


あながち冗談でもなく、うらめしそうに言うと、


「そんなことして、お前に責任とらされるのはごめんだ」


部長は呆れたように溜め息をついた。
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