忘れ去られたキオク



椎菜はせっせと俺の頭に乗っている生暖かくなったタオルを水で冷やしている。



「翔平とのデートを中断してまで、看病してあげてるんだから!!
感謝してよ?」



ぶつぶつ文句を言いながら俺の頭にタオルを乗せる椎菜。



いつもなら、それが可笑しくてフッと笑ってしまう。



でも、今日の俺はなにかが違った。



「...ソイツより、俺を選んだってことか?」



心の中で思うだけのはずだった言葉がポロリと出てしまったらもう、止められなかった。




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