アンチヒーロー
ユタもレジまでついてきて、私の隣に立ったまま何かを買うわけでもなくただ黙って店員を見つめていた。
お前は何がしたいんだ。
おつまみがレジに通され、その次にお酒が店員の手に持たれる。
それを見つめて、私はゴクリと生唾を飲んだ。
いけ。そのままいけ!
お願いだから年齢確認とかだけはやめてくれ!
「あの~…」
ドキドキとする中、店員が私へと視線をあげた。
やばっ……やっぱバレた!?
「何か身分を証明できるものって、お持ちでしょうか…?」
バレたぁぁぁぁぁああああ!!!!
怯えながら、私に聞いてきた店員。
その目は私を未成年だと疑っている。
怯えているのは隣のヤンキーであって、確実に私を疑っている!!
まぁ、未成年ですけども!未成年さ!
でもでもっ、未成年だって呑みたい時はあるんだよ!
深夜なんだし年齢確認とかやめようよー!
内心半泣き状態で店員をじっと見つめ返す。
とりあえずこのまますぐに引き下がるわけにはいかない。
どうしても呑みたい。ハイボール呑みたい。呑んで酔いたい。そんな気分なんだ。
何としてでも成人アピールしなければ!
そう意気込んで私は口を開いた。
「きょ、今日は、免許忘れちゃって――」
「おい」
へ?
私の在り来たりな嘘を遮る一つの声。
一瞬、店員に言われたのかと思った。
でも、すぐに違うと気付いた。
慌てて隣を見ると、ユタが威圧感たっぷりで店員を睨み付けていた。
その表情は般若とか鬼を連想させる程、恐ろしくて。
ヤンキーのメンチってこんなに怖いのかと、私まで震え上がったくらい恐ろしくて。
「ははははっ、はい!」
店員の上擦った声にすら反応出来ずに、ユタの横顔を見上げながら呆然としていた。
ユタは更に店員に凄む。
「てめぇ、コイツのどこが未成年に見えるんだよ」
「いや、あの…」
「俺がさっき酒買った時は年確しなかったじゃねぇか」
「そ、それは、えっと、」
「コイツは俺とタメだぞ。未成年なわけあるか」
「は、はい、すいません…」
店員がとっても可哀想に見えるのは私だけだろうか。