オオカミとお姫様


昼ごろ、ふらっと出て行った先公。
さっきの話でも聞きに行ったんだろう。

詩音…
大丈夫なのか?
何かされてないか?

不安だけがどんどん募っていく。
きっと詩音も不安に感じているだろう。
あんな風に騒ぎ立てられて平気なわけがない。
こんな時にそばにいてやれない俺はどうしたらいいんだよ。

「くそっ」

壁に拳を叩きつける。
鈍い音。それと共にジンジンと拳が熱くなる。

俺の醜い嫉妬がなければ。
独占欲に塗れてなければ。
汚れてなければ…

俺が黒くなければ、黒以外の色だったら詩音のそばに入れたはずなのに。
俺の心は黒く染まり過ぎた。
真っ白な詩音の心さえも飲み込んでしまうくらいに…
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