オオカミとお姫様
俺は、今の失態を忘れるために泳いだ。
泳いだって忘れられるわけじゃないってわかってるけど。
泳げば泳ぐほどに後ろめたい気持ちになった。

今日はもう泳ぐのやめよう。
詩音に謝ろう。

川から出た。
詩音を見ると、何か考え事をしているようだった。

「詩音、ごめん…」

「…」

無反応。
聞こえてないのか?
何を考えてるの?
誰の事を考えてるの?
俺の事、もっと知ってほしい。
独占欲だけが強くなっていく。

「何考えこんでるの?」

「……えっ!?」

俺に気付いた詩音。
目の前にいたことに驚いている様子。
今日はたくさん驚かせたな。

「もしかして、俺のことだったりして」

俺の独占欲が言葉を生み出す。
その言葉に俯く詩音。
…あながち間違いじゃなかったのか?
そうだったらすげー嬉しい。

「冗談だけど」

安堵した詩音。
俺の事考えてたって受け取っていいってことだよな?
そう思ったら、鼓動が加速した。
もっと意地悪したくなった。

「まぁ何のこと考えててもいいけどさ…」

目線を詩音に合わせ、顔に両手を添える。
このままキスしてしまいたい。
その感情を抑え、言う。

「どうせなら俺のことだけ考えてよ」

今の俺の精いっぱいの言葉を伝えた。
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