アンラッキーなあたし
「あの人が、ものすごい形相で髪の毛振り乱して柱の陰に佇む姿なんて、まさにホラーっすよ。僕、いつも睨まれてて恐かったんです。殺気を感じてました」

「やだぁ、中田さん。それ、恋する乙女の眼差しだったんですよぉ。けど、確かに、あの子、何考えるか分からない感じでしたよねぇ。いつも無表情で。まだチャッキーのほうが愛嬌あるっていうかぁ。恵梨菜、あの映画結構好きですもん」

それであたしは、チャッキーが「チャイルド・プレイ」というホラー映画に登場する人形のチャッキーだということに気づいた。

「占い師さん。僕、あんなブスと付き合うくらいなら彼女なんかいらないです」

中田さんは言い、どこかへいなくなってしまった。他の社員たちも見学に飽きたのか散り散りになっていく。

「あの、なんかうちの社員がすみませんでした」

残った千葉がそう言って頭を下げた。

「遅くなってごめんよぉ。さくら、休憩行ってきな」

そこへ、ちょうどよくルコ先生が帰ってきた。あたしは、ぐっと涙をこらえ、走ってトイレへ駆け込んだ。
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