アンラッキーなあたし
「ちょっときて」

あたしは瀕死の千葉を引きずるように非常口までつれてくると、どうしてあたしだとわかったのか問い詰めた。

「いや、わからなかったよ。初めは。けど、なんか会ったことのある人だって、ずっと気になってたんだ。けど、どうしても思い出せなくてもやもやしていたんだ」

ずっともやもやしてろよ。

「そしてら、お前、マスクで出てきただろう?そこで、あ、桜庭だったのかって、ようやく気づいて…」

ちっ。マスクじゃなく覆面にすりゃよかった、とあたしは後悔する。

「いや、お前、会社やめて占い師やってたんだな。すげぇじゃん!」

「ま、まぁ…」

興奮しながらも、千葉はしきりに背中をさすっている。どうやら痛むらしい。千葉のスーツにはあたしの靴のあとがくっきりついていたが、そんなことはどうでもいい。教えてなどやるものか。
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