アンラッキーなあたし
「桜庭さん、さっき聞いた通りにお願い」

給湯室に着くと、打って変わって冷めた口調で恵梨菜が言う。こいつは自分でお茶を入れることができないのだ。

恵梨菜が入れるお茶のひどいことと言ったら、もう、意地悪な姑じゃなくとも「ねぇ、あなたのお母様はどんな躾をなさってきたのかしら?」と文句の一つも言いたくなるような有様だ。

地獄の池のように沸騰したお湯に、多すぎるお茶っ葉を豪快に投入。まるでドブ底から救い上げたへどろのような液体をなんのためらいもなく来客へ出す鈍感さ。

一度などそれをあたしのせいにした。

「すみません、桜庭さんに頼まれて。恵梨菜は運んだだけなんですぅ」と、涙目で訴える恵梨菜の嘘をまんまと信じる社員も社員だが、やっぱりこいつには腹が立つ。
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