アンラッキーなあたし
「…ば!おい、桜庭!」

ぼけーっとしているあたしを呼んだのは営業の千葉翔太だった。社内では若手のほうで、仕事もでき、容姿も悪くない。

そういえば、こいつだけはあたしのことを名前で呼んでくれるんだった。

「あ、千葉さん外回りご苦労様ですぅ。恵梨菜がお茶入れてあげますよぉ。何がいいですかぁ?」

どっから湧いてでたのか、恵梨菜は真夜中のゴキブリもびっくりな素早い身のこなしで千葉に近づいた。

恵梨菜のまつげは天を仰ぎ見、唇は天ぷらそばを食った直後のようにてらてらと輝き、そしてどういったわけかブラウスのボタン一つ開いている。一体この短い時間でいつ身支度を整えたというのか。美少女戦士セーラームーンも見習うべき早変身にあたしは度肝を抜かれた。
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