アンラッキーなあたし
「続いては、29番。桜庭さくらさんに告白したい方はいませんか?」

あたしは顔をあげることができなかった。どうせ結果は見えているのだ。

あまり引っ張らないで終わらせてくださいよ、おばちゃん。それが情けですよぉ。

「桜庭さんへ告白したい方はどうぞ」

会場がざわめく。

なんだよ、そんなに惨めなあたしがおかしいのかよ。

そう思って顔を上げると、目の前には千葉が立っていた。

なんで?立花ミズ菜に告白しなかったの?

千葉はやや緊張した面持ちで、

「俺でよかったらお願いします」

そう一言だけ言った。

ああ、そうか。千葉はまたあたしを助けようとしているんだ。あたしが惨めにならないように。カピバラさんに裏切られたあたしに同情してるんだ。

「さあ、桜庭さんの答えは!」

おばちゃんがいちいちはやし立てるのが耳障りだ。

あたしはね、今、猛烈に感動してるの!千葉の優しさに胸を打たれてるんだよ。バカな千葉。折角のチャンスを棒に振ってさ。可愛い彼女ができたかもしれないのに。千葉、ありがとう。そして、迷惑ばかりかけて…

「ごめんなさい」

あたしは感謝とお詫びの気持ちを込めて深々と頭を下げた。

「残念!カップル成立ならずぅ」

おばちゃんの声にはっと我に返る。

おや?あたし、今、なんて言った?確か、ごめんなさいって…。

し、しまったぁ!

こともあろうか、あたしは公衆の面前で千葉を振ってしまったのだ。千葉は、明らかに怒っていた。口ぱくで「しね」と言うほど、怒り狂っていたのである。

< 259 / 354 >

この作品をシェア

pagetop