アンラッキーなあたし
か、かわいー!

眠り姫だか泥棒だか知らないが、彼女は恐ろしく可愛かった。

肌が透き通るように白く、頬と唇はばら色。長い睫毛がひくひくと動いている。

これはどう見ても眠り姫だ。泥棒なんて言ったらばちが当たりそうだ。

しばらくあたしは、彼女の寝顔に見とれていた。同じ人間のメスでありながらこの差たるやいかに。

美人は眠っていても美人だった。よだれをたらしたり、いびきをかいたりしない。ネッペなんてもってのほかだ。ただすやすやとリズミカルな呼吸を繰り返している。

君の寝顔が見たいから、君が眠るまで起きているよ、ベイベー!などと、キザな台詞を吐く男の気持ちがよくわかる。

そのうちあたしはマシュマロみたいなほっぺたを触りたい衝動に駆られた。毛穴一つない肌は、グラビアアイドルそのものだ。いけないとわかってはいるけれど、触れてみたい。痴漢男の気持ちを理解した瞬間だった。

プニ。

衝動を抑える事ができなかった。出来心とはこういうことを言うのだろう。

「う…ん…」

すると彼女は、頬を引きつらせ、ゆっくりと目を開いた。

姫、おはよう。
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