アンラッキーなあたし
「ただいま帰りましたぁ~。夕飯、すぐ作りますね?」

センチメンタルな気持を外に置き去りに、あたしはいつも通り振舞った。妙に浮かれたりはしない。けど、やはり、心は弾んだ。

「キャハハ…。やだぁ、翔太ってばぁ!」

あれ?この声は?

いつもならいないはずの弥生の声が聞こえた。今日は出かけないのだろうか?せっかく、二人きりで過ごせると思ったのに。リビングへ向かう足取りが急に重くなった。

「ただいま帰りましたけど…。」

「あっ、お帰りなさぁい!」

「おっ、桜庭お疲れ!見ろよ?今日の夕飯は弥生が作ってくれたぞ?」

えっ…?

テーブルの上には、季節はずれの鍋が湯気を立てていた。

「さくらさんも食べて?ほら、これでも苦労したんだよぉ?特にお豆腐切るとことか!ぐちゃぐちゃになっちゃったー!」

「弥生ー、これじゃ豆腐チャンプルじゃん!」

「いーの、いーの!翔太、お代わりよそってあげる!」

弥生はギラギラデコレーションされた爪で千葉からお皿を受け取った。
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