アンラッキーなあたし
それが、ある朝いつも通り出社すると、工場の前にはパトカーと黒山の人だかりができていた。

経営者の夫婦の遺体が、発見されたのだ。借金を苦にした自殺だった。

工場の経営が思わしくないのは、薄々感づいていた。けれど、そんなこと、みんなで力を合わせれば乗り越えられると、本気でそう思わせてくれるほど、温かさに満ち溢れた場所だった。

事件の前日だって、みんないつも通りたのしく仕事を終え、笑顔で別れた。

経営者のおじさんとおばさんだって笑っていた。

それがたった一日でなくなるなんて、信じられなかった。

自分を受け入れてくれた人と場所を一度に失ったあたしは、もう何もかもがどうでもよくなって、あてもなくさまよった。

絶望の中で、ふと、こんな考えが頭を過ぎった。

あたしが不運な女だから、あたしと関わった人まで不幸になるのでは?

だって、あたしの行く先には、いつも悪いことばかり待ち受けている。
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