アンラッキーなあたし
狭い部屋の中をちょこちょこと動き回る老婆は、おとぎ話の中に出てくる魔女を連想させた。

あたしは魔女に食われちまうんだろうか?

そんなことをぼんやりと考えた。

当時のルコ先生は、真っ黒に腰まで長いかつらをかぶっていたから、絵本に出てくる魔女そのものだったのだ。おまけに鼻もわし鼻で、声は酒に焼けがらがらだ。

ふと目が合い、ほんの数秒あたしたちは見つめあった。

「あんた、本当に運のない顔だね。ついていないだろう?」

まじまじとあたしを見つめたあと、ルコ先生はそう言った。

「あんたの顔は稀に見る不幸顔だね。あたしも長いこと占い師やってるけれど、こんなにも幸の薄い顔ってのもなかなかいないよ」

それであたしは、ルコ先生が占い師でここが占いの店なのだと知った。

「あ、あなたには関係の無い事です」

借りたタオルを押し返し、「失礼します」と、去ろうとするあたしに、先生は言った。

「ねぇ、あなた。ここで占い師として働いてみない?」
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