アンラッキーなあたし
「ところで、さくら。何か用があったんじゃないの?」

壊れた機関銃のように喋り続けていた母のお喋りが、これまた壊れた機関銃のごとく、ぴたりとやんだ。

ええ。二十分ほど前までなら用事がありましたが、今はもうございません。

「べつに…。ただ、なんとなく電話しただけ」

「そう?ならいいけど。さくらもさ、早く結婚でもして落ち着いちゃいなさい。もう28だっけ?あんたは美人でもなけりゃ愛嬌もないんだから、若いうちに売っとくのよ?いい?じゃあね」

電話は一方的に切られてしまった。

受話器を握り締め、しばし、放心した。

美人でもなけりゃ、愛嬌もない、か。

ついでに職もなく借金まであると知ったら、母は卒倒するだろう。

頼りにしていた実家にお金がないことを知り、あたしは途方にくれた。定期預金どころか、毎月の支払い、それに、生活費だって必要。

さて、どうしましょう?

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