アンラッキーなあたし
お金、どうしよう。

湿っぽい座布団に腰を降ろした瞬間、尻に激痛が走った。

「いててて」

見ると、座布団がこんもり盛り上がっている。座布団の下にあったのは、錆びた銀色のドクロの置物だった。

おお、これは!

あたしはドクロを手に乗せまじまじと見る。これは、他人の幸福を吸収する悪魔のドクロ「ドク郎君」だ。ちなみにお値段五万八千円・送料込み)。雑誌で見たときは毒々しく見えたドク郎君も、こうして見るとなんとも間の抜け顔をしている。

そもそも、幸福そうな人間にドク郎君を向ければ、その幸福を吸収できるなんて、あるはずもない。

これを買ったばかりのころ、テレビで婚約会見を開いていた芸能人カップルに、ドク郎君を必死にむけていた。

思い返してもバカバカしい限りなのだが、その時は本気だった。

ドク郎君を鷲づかみにすると、ボーリングをするみたいにえいと転がした。

ころころと転がったドク郎君は、ベッドと床の隙間にちょうど挟まり、逆さになって止まった。

ホラーマンみたいだ。

あんな置物に五万八千円も払った自分に、スピーニングバードキックをお見舞いしたい。
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