アンラッキーなあたし
他の社員も「お疲れ」とか、「ご苦労様」とか「頑張ってね」とか、そんなありきたりの言葉をバカの一つ覚えみたいにかけてきた。

なかには、言ったことすら忘れて、すれ違うたびに、「今日で終わりだね。頑張って」なんて言うやつすらいる始末。

ここでのあたしの存在は水素よりも軽いらしい。

でも、まあ、いいのだ。いつもなら、少しはうじうじしちゃうところだけれど、今日のあたしは寛大だ。だって、あたしの未来は明るい。

今朝、あたしの通帳には約束通り二百万円振り込まれていた。そのうちの半分をローンの返済にあて、もう半分を引越し&開業資金にあてるつもりだ。

明日には不動産へ向おう。ここ最近の不動産や巡りで、だいたいの目星はついている。

狭くて小汚いアパートとももうすぐおさらばだ。あたしは、広くて綺麗な2LDKを借りる。狭い方を寝室に、広い方を占いの部屋にするのだ。

あ、あとニトリにも寄ろう。

あたしの妄想は無限大だった。

人生これからだ。
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