丹後の国のすばる星
 はだけた下着を直しながら、あずみは荒い呼吸を鎮めようと起き上がる。
 島子はいろりの脇で満足そうに転寝をしていた。
 淡い桃色のカーディガンを肩に引っかけ窓の外を見やれば、闇のカーテンにちりばめられた宝石のような星々たちが煌いていた。
「きれいねえ」
 声で目を覚ました島子は、服を身に着けてあずみの横に立った。 
「筒川の名物やもん」
「名物。ああ、それわかる。夜道を照らすみたいに、こんなに輝いて」
「すばる星とあめふり星。ぼくの母上が住んでいた蓬莱山にはそう呼ばれてるたくさんの星の子たちがおって、あの輝きをまもっとるんよ」   
「そうなんだ」
「ぼくにはもう、関係のないところかも知れんけど…」
 寂しそうな表情で遠くを眺める島子の姿に、あずみは胸を痛めた。
「皇子さまに頼んでは、どう」
「あかんよ。皇子さまは蓬莱に未練はないらしいし」
「そうなんだ…」
 島子は軽めにあずみの肩をたたき、眠そうな顔をした。
「まだ夜明け前。寝ておこう」
 あずみは島子の手に触れ、空を見上げて答えた。
「私はもう少し起きてる。あの星を見ていたいから」    
 島子は小さく微笑むと、むしぶすま(ふかふかのかけ布団)を引っ張り上げ、横臥の姿勢になった。
 
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