月夜の桜
**。
「……姫様?」
いつの間にやら己の腕の中で涙を流していた姫が微動だにしていないことに気づき、威月は訝しげに声をかける。
けれど、彼女は彼の問いかけに答えるそぶりを見せず威月の胸に顔をうずめたまま、やはり微動だにしない。
もしや、身体の調子が悪くなったのだろうかと焦り始めた威月が彼女を自分から引き離そうと肩を掴んだ時、桜は苦しげに眉をひそめると身じろぎを一つした。
「う……ん……」
あまりに唐突なことに思わず肩から手を離し、固まってしまった威月をよそに彼女はすやすやと気持ちよさそうに寝息をたてる。
その様に、彼は思わず苦笑を零した。
「あなたと言う人は……」
後頭部にまわした手で彼女の桜色の美しい髪を梳いて、威月は目を細める。
神の娘であるはずの桜。
何の手違いかで地上に生まれい出た彼女は、その髪と瞳の所為でありもしない陰口をたたかれ今まで辛い目にあってきた。
実はと言うと、彼はずっと昔から桜を知っている。
それこそ、彼女が天界に生まれい出てからずっと……。
桜がどんな辛い目にあってきたかも全て知っているし、その時の自分の醜い感情だってきちんと覚えている。
時にはあること無いこと面白おかしく語る人間たちへの負の感情で悪しき者に貼り果てそうになりながらも、ずっと……。
威月は悲しげに顔を歪めて、桜の髪をすく。
「申し訳ございませんでした。ずっと、助けて差し上げられなくて……」
何度も何度も助けようと思った。
けれども、そのたびに“主”の命令がそれを止め歯がゆさを感じたことなど数知れない。
申し訳なさに、眉を潜めていると不意にもぞっと桜が身じろぎをした。
髪を梳いていた手を止めて彼女に視線をやると、彼女は何とも愛らしい笑顔を浮かべてえへへ、とあどけない笑みを浮かべる。
「威月……」
己の名を呼ばれたことに、威月は虚をつかれて目を見開く。
「……姫様?」
いつの間にやら己の腕の中で涙を流していた姫が微動だにしていないことに気づき、威月は訝しげに声をかける。
けれど、彼女は彼の問いかけに答えるそぶりを見せず威月の胸に顔をうずめたまま、やはり微動だにしない。
もしや、身体の調子が悪くなったのだろうかと焦り始めた威月が彼女を自分から引き離そうと肩を掴んだ時、桜は苦しげに眉をひそめると身じろぎを一つした。
「う……ん……」
あまりに唐突なことに思わず肩から手を離し、固まってしまった威月をよそに彼女はすやすやと気持ちよさそうに寝息をたてる。
その様に、彼は思わず苦笑を零した。
「あなたと言う人は……」
後頭部にまわした手で彼女の桜色の美しい髪を梳いて、威月は目を細める。
神の娘であるはずの桜。
何の手違いかで地上に生まれい出た彼女は、その髪と瞳の所為でありもしない陰口をたたかれ今まで辛い目にあってきた。
実はと言うと、彼はずっと昔から桜を知っている。
それこそ、彼女が天界に生まれい出てからずっと……。
桜がどんな辛い目にあってきたかも全て知っているし、その時の自分の醜い感情だってきちんと覚えている。
時にはあること無いこと面白おかしく語る人間たちへの負の感情で悪しき者に貼り果てそうになりながらも、ずっと……。
威月は悲しげに顔を歪めて、桜の髪をすく。
「申し訳ございませんでした。ずっと、助けて差し上げられなくて……」
何度も何度も助けようと思った。
けれども、そのたびに“主”の命令がそれを止め歯がゆさを感じたことなど数知れない。
申し訳なさに、眉を潜めていると不意にもぞっと桜が身じろぎをした。
髪を梳いていた手を止めて彼女に視線をやると、彼女は何とも愛らしい笑顔を浮かべてえへへ、とあどけない笑みを浮かべる。
「威月……」
己の名を呼ばれたことに、威月は虚をつかれて目を見開く。