《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
そっと抱き寄せられている時間、キスをするよりも遥かに胸をドキドキと高鳴らせていた。


鼓動が早まって三浦に聞こえてしまうくらいに大きくなり、人形みたいにただ抱きしめられていた。


両腕はだらんと下がり、私は三浦にされるがままだった。



「明日、うちに来いよ。待ってるから」


「……」


返事なんかしなかった。

ううん、出来なかったが正しい。

どうするべきか悩んでいた。
悩みながら三浦の頭の上にある緑色の葉っぱを見上げた。その葉は、長くて大きくてひらひらしてると気がついた。


これが確かバナナの葉っぱだったなって思い出した。



高校の時にいった沖縄フルーツらんどでやはりバナナの葉を見た。園内を案内してくれたお姉さんが丁寧に説明してくれたっけ。

『バナナの木、正確に言うと木というのは間違いで〜大きな草ですが。この大きな草には、バナナは一度実を付けたら二度と実を付けないんですよ』と言う話を聞いたことを三浦にハグされたまま、懐かしく思い出していた。

一度きり……か。


私の体を優しく包むようにハグする三浦の体温を感じる。

店内のもともと落ち着いた色だった照明が、ウクレレソングが終わり静かな波音のヒーリングミュージックに変わったところで、夕日みたいなオレンジ色の照明に変化した。


少しの間、私は三浦にハグされたまま動けずにいた。

一度きりの実……。



「明日も……会いたい」
耳元でそんな風に呟かれていた。


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