《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
⑭中川真澄〜切ないくらいのNO!〜
★★★


三浦くんから「好きだ」って言葉も聞けた。

それなら、いいではないかって。
生娘じゃあるまいし、一応、そんな風には思っている。

でも、彼は私よりも3つも年下で、きっと前のぴちぴちした彼女と29歳の私を比べる。
そしたら、きっと幻滅される。そうに決まってる。

三浦くんみたいなイケメンを世の中の女性たちが放っておくはずがない。過去に彼女とかがいても、それは仕方が無い。今がフリーなら、それでいい。

今、目の前にいる三浦くんが好きなら、それでいいはず。過去とかそういうのにこだわったり、見たことも無い元彼と自分を比べてあれこれ考えるのは、どうかしている女がすることだ。

好きなら好き。単純明快に考えればいい。

難しい事を考える必要はない。



「真澄さん」

寝室のドアの所に三浦くんが立っていた。

「あ、ごめん。考え事してた。これ、一応落ちたから……リップの汚れ」
畳んだシャツを差し出すと三浦くんは黙って受け取り、しばらくシャツを眺めていた。


それから、呟いた。
「汚れなんて言うなよ」


「え?」


「汚れなんかじゃない。真澄さんのリップが、俺のどこについたっていいんだって。俺にとったら、かえって嬉しい位なんだから」

シャツを胸に抱えた三浦くんは私をぎゅっとシャツと一緒に抱きしめた。




リビングの点けっ放しにしてあるテレビからは、アイドルのキャピキャピした声がしていた。
なんだかわざと造ってるみたいに空々しい声だった。
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