《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「もしかして、逃げたとか思った? 血相変えてさー」
にやつく三浦くん。
「ま、まさか。そんな訳ないよ」
核心をつかれて相当に気まずかった。
男と女のそういう関係になって当たり前に初めての朝を迎えられるほど神経が図太くはないってだけの話。
フライ返しを置いて立ち尽くす私の所へきた三浦くんは、優しく私の額にキスをした。その後、唇にもキスをしてきた。
朝のキスは、小鳥みたいだった。
「俺は、逃げないから安心しろって」
「う~」
ぽんぽんと軽く頭を叩かれた。
また、何かを作りにガス台の前に戻る三浦くんの後姿をなんだか微妙な気持ちで見ていた。
「あっと」
何かを思い出したみたいに、くるっと引き返してくる三浦くん。
「大切な事を忘れてた」
私の前に来た三浦くんの腕が腰にまわって、おもいっきりぎゅっとハグされる。
「俺からも逃げられないよ、真澄」
朝っぱらから全身を血が勢い良く駆け巡っていた。
くやしいほどに完全に翻弄されすぎだった。
「……真澄、俺さあ、ますます真澄が好きになった。どうしようもないくらいにさ」
抱きしめられて、しみじみとした幸せを感じる。確か、これが恋じゃないだろうか。
深い関係になって、三浦くんに対してより深くなった想い。
でも、恋は既に始まっていたんだと思う。
こうなってから改めて考えてみると、三浦くんに出会ったときから、他の女子と同じようにかなりときめいていた。