《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
クンクン……
「こげくさ!」
「ぇ? まじ!」
急いで火を消しにいく三浦くん。
「ちょっと! まじめにやってよ!」
ガス台の前へ行き、フライパンの中にある焦げ付いためだま焼きらしきものを眺めた。
「なんだよ。人に作らせといて!」
「勝手に作ったくせにさ、あーそういう恩着せがましい事いうんだ。知ってる? そういうの身勝手っていうのよ」
「身勝手だあ? ふざけんな! 昨日の夜みたいにしおらしくなったらどうなんだよ」
「うわっ! 夜の話持ち出しちゃうんだ。最悪、最低」
「なんだと!」
「なによ!」
三浦くんと鼻先をつけて睨みあった。
じっとにらみ合ったあと、
「ごめん」
先に折れたのは、三浦くんだった。
「だめだなー、俺。完全に尻にしかれるパターンだな。真澄に惚れすぎてるから最後は負ける。はあ、なんでこんなに惚れちゃったんだろ」
ため息をつく三浦がどうしようもなく可愛く見えた。
「いいことよ。そんなに惚れられる人に出会えて嬉しいでしょ?」
「なんだよ、その上から目線」
「いいでしょ、今ぐらい」
私も自分の中で精一杯バランスをとっていた。
年上の事を気にしていた。
イケメンすぎて自分には不釣合いなくらいの男と恋することに、はっきり言うと怯えていた。でも、表面上はそんな事は気にならないってフリをしてる。かっこつけて虚勢はってる。
そんな私でもようやく気がついた。
臆病なままでは前に進めない。
傷つく事を恐れていたら恋なんか出来ない。
先のことなんか誰にもわからないのだから。