《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
まだ続いていた三浦のイケメン苦労話。だれも笑わないし、同意しないはずだ。

「今日もメンバーの吉田から一番年上の冴えない女を連れて行ってもらえないかってラインでいわれでえええええ!

ばきっ!

「くそ! なんだよ!」

三浦は私に殴られた顔をおさえて呻いた。私は、仁王立ちしながら偉そうにして自分の右手を撫でる。

そうそう、イケメンだもんね。綺麗なお顔がさぞかし大事でしょうよ!

我慢しているが、かなり拳が痛い。苦痛で顔を歪めないように、無理に余裕のある笑みを作ってみせる。

「なんだよって、こっちの台詞だよ!」

ちょっと、昭和のスケバンみたいな口調になってしまったことは、少し恥ずかしかった。

あんな男とは一瞬たりとも一緒にいたくない。馬鹿で無神経なウィルスが、うようよと飛び出してきて私の中に入り込んできそうだ。


大通りへ出るとタクシーをひろった。

一刻も早く家に帰ってフロにでもつかりたかった。

年甲斐もなく合コンなんて行ったのが最大の間違いだった。

少しだけ……

ほんの少しだけどあんな男にときめいた自分が最高に許せなかった。

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