《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
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武蔵小杉駅から徒歩10分以内にある5階建てのマンションに私は、鹿児島県阿久根という場所からこっちに出てきて、かれこれ8年くらい住み続けている。

恵比寿にある会社への往復を飽きもせず繰り返す毎日。

片道、約30分ほどの時間をかけての通勤は、電車が混んでいることを除けば実に便利だ。

家の近所が変わりばえのない景色だったのは、ここ何年か前までだ。

近年武蔵小杉は変わり始めている。猛スピードで駅の近辺が栄えてきたし、高層マンションが次々と建ち、道も広くて綺麗に整備された。

商業施設が新しくオープンしたり、天まで届きそうな謎の青い光タワーが出現し、ネットで話題になったなんてこともあったほど、注目される街になり我が事のように嬉しく感じている。

住んでいる街が綺麗になり、人気が出るのは良いことだ。

だが、私は昔ながらの商店街も好き。ショッピングセンターとかにおされ、なくなったりしないといいけどと、心配もしている。
自分の住むマンション方向へと商店街を歩きながら、変わりばえがないのは、私だけのような気分になってきた。


帰宅途中に近所のコンビニへ寄り、黄色のゴムで読めないようにしばられた雑誌の表紙を見つめ付録なんかをチェックする。
実際、雑誌もそんなに欲しい訳じゃない。付録バッグだって必要に迫られるものではない。

現にうちの押し入れにある三段の収納ボックスには、どう使うべきか迷う付録バッグがギシギシに入っているボックスが一段ある。

それなのに今日も花柄ポーチが付録についている雑誌をカゴへ入れた。

このポーチサイズならなんかに使えるかもって「なんか」なんてものは大かた永遠に存在しないのだが、何故か付録のバッグ類についてはポジティブに考えてしまう。

買ったはいいが実際は、何を入れるべきなのか首を傾げるようなものばかりなのに、つい買ってしまうのだ。

でも、どうせ付録だったし……とそれでもいい感じに済ませてしまう。
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