《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』

「いいなー。先輩だけずるいですよ」

私の話をうのみにした万里は、しきりに
ずるいずるいと連発していた。

「ずるくないよ。パッと見はさ〜かっこいいかと思ったけど、じっくり見ると実はそうでもなかったし……。あっちの方もなんだか普通だったしね」

少し話を盛りすぎたか? まあ、いいか。どうせ1日だけの小さなジョークだし。

だけど、最後の「あっちの方」までは言わなくても良かったような気もする。
つい、軽い調子で言わなくてもいいことまで言ってしまった。

万里に話していたつもりが昨日合コンに参加していた新人や、関係無い女子社員まで集まってきていて私の言葉をいつのまにか聞いていた。

ヤバッ。

口を押さえたが時既に遅し。だいぶ沢山の社員に嘘の中川真澄モテ話が広がってしまったように思う。

ま、いいか。別に三浦とは二度と会わないんだし。

「えーーー、あっちも普通? やだ、先輩ってば! すごいなー」

みんなでやいのやいのと騒ぎ出して結局、いつのまにか私が作り出した話は巨大な尾ひれをつけて会社中に広がっていった。

なんでも又聞きの噂話だけど、中川真澄は、年下イケメンをものの何秒かでゲットしたらしい。よく見たら、ブサメンだったとか。えっちがダメな男としたらしいよとか、悪い話へ変わり、しまいには何かがダメな話になっていた。

本当に広がってほしい話は広がらず、噂話なんて、みんな適当に面白おかしく作り変えて広めてく。

結局、私がダメな感じになってないかなぁ?


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