《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「あ!」


「げ!」


声をあげたのは、ほぼ同時だった。気持ちいいくらいに、はもった。

昨日出会った最悪の男、三浦がそこに立っていたからだ。

一瞬見間違えたかと思った。

かがんでいた体を起こして今日はコートの上に赤系の格子柄マフラーを巻いている三浦がうんざりした顔を見せた。
「しんじらんねー」


私も思わず舌打ちをした。
「世の中が狭すぎ。最悪」


お互いに悪態をついての再会だ。本当に世の中って狭い。

テレビで何やってる人かよくわからないコメンテーターが言っていたことを思い出していた。

『前世に出会った人とは、現世でも来世でも出会います。その出会う形、関係性は変化しますが、必ずどこかで出会うと決まっています』と。

その話を聞いたときは、ゲンナリした。何故って、意地悪な課長に来世でも会うかと思うと気が滅入って生まれ変わりたい気がしない。

もし、関係性が変わって、あの課長が彼氏になったりしたらどうするつもりなんだ。怖すぎる話だ。

だから、その話が事実だとすれば三浦とも前世でも会っている。予想だが、前世でも仲が悪かったはずだ。

五目焼きそばは、そんなに食べたかった訳じゃなかった。だけど、こいつに渡すかと思うと途端に惜しくなってきた。

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