【あなたと私で創るものがたり】
 息子が成長し、ますます愛らしく感じる度にその効力は強くなっていったように思う。

 気のせいだとも思いたいが、報告に来る客の数は明らかに増えていた。

 赤子の頃の息子は病気がちで、妻と二人でハラハラしたものだ。

 ちゃんと育ってくれるのかといつも心配していた。

 三歳になる頃にはそれもなくなり、好きなキリンのぬいぐるみを常に抱いて寝ていた。

 その寝顔がなんとも愛らしく、息子の寝返り一つで私は幸福になれたものだ。

 いつか恋人を連れてくるんだろうなと独り言のようにつぶやいていると、まだ早すぎると妻が輝きに満ちた笑顔を見せた。

 こんな幸せな時間が持てるなんて、私は二人に感謝した。

 全てが順風満帆(じゅんぷうまんぱん)だと思われていたとき、それは起こった──
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