隣に座っていいですか?

朝はたまに田辺家に行き
朝ごはんを一緒に食べ
桜ちゃんを幼稚園に送り出し、そのまま店へ出て仕事。

そして
桜ちゃんが幼稚園から帰り
私を誘って一緒に田辺家に行く。

今日は掃除をしよう

魚の煮付けをしながら
和室に入り
仏壇の花の水を入れ替え
お茶と水を供え手を合わせる。

すると
バタバタと桜ちゃんがやってきて、私の隣にちょこんと座る。

「いくちゃんママは、さくらのお母さんと、どんなおはなしをしてましたか?」
屈託のない顔で言われた。

亡くなった奥様とお話。

私の事 恨んでませんか?
私の事 嫌ってます?

なんて
桜ちゃんには言えない。

「『桜ちゃんがニンジンさんを食べてくれますように見守って下さい』ってお話してた」

「いやぁ」
大きな声でそう言って
甘えて私の膝の上にのる。

私はサラサラな髪を撫で、一緒に奥さんの遺影を見つめていた。

「お父さんはよくおはなしてました」

田辺さん
奥さんの事
愛してたんだろうな。

「『きみはいつまでも、わかくていいねぇ』っていってた」
口調を真似てるのが似ていて、笑ってしまう。

「『へんじはないんだね。なにもいわないんだね』って……」

私はただ
桜ちゃんの髪を撫でる。

「『きみへのきもちはかわらない』って」

その言葉で
心臓がズキリ。

だよね
ずっと愛してるんだ。


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