隣に座っていいですか?
興味津々で近寄ろうとすると
私より興味アリアリで
母親が大きなお尻で私を突き飛ばし、女の子の傍に寄る。

「お引越ししてきたの?」

膝を下ろし
最近見た事もないような優しい声と顔で女の子に話しかける。

「はい」
女の子は元気に返事。

あぁ
可愛いわ。癒されるわ。
乾電池何本で動いてるんだろ。

「あとから父がごあいさつにきます」
はきはきと言い
また頭を下げて
風のように行ってしまった。

残された私と母と
常連さんは呆然。

「あの豪邸、借り手ついたんだ」

昔ながらの小さな商店と小さな家が並ぶこの町内で、ドドンと一件場違いな豪華なお屋敷が建っている。

つぶれそうな
そば屋である
我が家の隣に
これ見よがしに建ってる豪邸。

昔バブルという
幻の景気があり、その時建ったらしいが
皆さんの予想通り
バブルは弾け
借り手は次々と変わり
今は空家だったのだけど

そうか
最近何やら
隣の家の周りがにぎやかだと思っていたら。

そうかそうか

可愛い幼稚園児が来たか。

てか
あの豪邸を借りるってのは
どんな金持ちなんだろう。

< 2 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop