隣に座っていいですか?

「遅れたー」
扉が開き
達也がやってきた。

「桜ちゃんおめでとう。ほらプレゼントだよ」
達也は甘い声を出し
桜ちゃんに紙袋を渡すと
桜ちゃんは目を輝かせて小さな手を広げ受け取った。

何かな?何かな?

桜ちゃんは顔をほころばせ
赤いリボンの付いてる包装紙を開けると

お絵かき帳と色鉛筆と貯金箱。

って
これって
達也の職場の銀行で
通帳作ったらもらえるやつじゃない?

冷めた目で見ると

「気持ちがあれば粗品でも喜ぶ」

まぁね
そうだね。

失敗したな
私も何か用意すればよかったよ。

「ありがとうございます」
嬉しそうにお礼を言い
銀行の名前が書いてある粗品グッズを抱きしめ、桜ちゃんは田辺さんに見せに行く。

やっぱり
一番最初に
大好きなお父さんに見せたいのか。

田辺さんも大きな声で「よかったね」って言い、達也に向かって折り目正しく頭を下げて、優しい顔をする。

優しい目をしてるな
田辺さん。

桜ちゃんに似てる。

< 31 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop