今宵、きみを想う
 たわいもない話で盛り上がり、近況報告をする。


 仕事のこととか。

 
 彼氏のこととか。


 最近行った店とか。



 つまんないことでも、久しぶりに会った友達と話せば何でも楽しい。



 「じゃ、そろそろみんな集まったから乾杯すっぞー!」



 幹事を務める彼が、大声を張り上げたのを機に、みんななんとなく静まった。



 ぐるり―――見渡していくと



 ……いたっ!



 会いたくて、でもどこか会うのが怖いと思っていたキミがいた。



 いや、やっぱり単純に会いたかった。



 ―――やっぱ、カッコいい。



 そう思うのは私だけかな?


 あのころもスラリとして、優しそうな顔が好きだった。


 でも、その目は私を一度も女としては見てくれたことがない。



 トクトクと高鳴る胸を押さえながら乾杯の音頭でカチンとみんな、グラスをぶつけ合った。
< 10 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop