今宵、きみを想う
 *


 「お前、俺のこと好きじゃないだろ?」


 そう言われてフラれたのは何回目だろうか?


 「そんなこと、ない」


 何度も吐かれた同じセリフに、心が折れそうになりながら震える声で言葉を発した。


 違う。


 私だって、貴方のこと思ってきた。


 本当に本気で。


 私なりに一生懸命に愛も注いだ。


 それなのに、どうして伝わらないの?


 悲しくなってそれが涙に変わろうとするから、目頭をギュッと抑えた。


 泣きたくなんかなくて、目を逸らして冷たくなったコーヒーを口にした。



 「そんなこと、あるよ。だってお前、俺のこと見てない」

 「ないよ! ないったら! 私、私だって……!!」

 「じゃあ。今すぐ俺と結婚して」

 「―――え?」


 想像してなかった言葉に震えながら顔を上げると、神妙な顔をした貴方。


 それは、今までに見たこともない表情で、私は思わずドキリとした。


 「け……こ、ん……?」


 たどたどしく言われた言葉を反芻して、そのまま黙った。
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