今宵、きみを想う
 *


 カーテンの隙間から朝日が差し込むのを感じてうっすら目を開いた。


 朝だ……


 なんて当たり前のことを思いながら、隣で眠る彼を見つめた。


 やっぱり、こうして寝てたら変わらない彼。


 昔と何一つ変わらない。


 少し難しそうな顔してるところも。


 温もりも。


 何一つ。


 だけど、心はどうなんだろう?


 私はあの時、あなたに捕まったのに―――


 あなたを選んだのに。


 近づこうとすれば近づこうとするほど、私たち離れてる気がする。


 どうしたら、近づくことが出来るの?


 離れないって証明、どうしたら出来る?


 眠る彼の前髪にそっと口づけると、愛しさがこみ上げてきてそっと髪を撫でつけた。


 ―――あなたにどうか愛しさが伝わりますように……
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