背徳味のキス
『先輩、柏原です。玄関にいます』

「え、何で?」

驚いて玄関に出ると、神妙な表情の柏原くんがそこにいた。
営業の途中みたいで、当然の事ながら……スーツ姿だ。

「体調どうですか?」

心配している……というよりは、心を探るような目つき。

「う、うん。薬飲んで寝てるから……大丈夫」

(ずる休みがバレてるなんて事ないよね?)

そう思って彼を見るけど、彼は何もかも分かっている……といった表情だ。

「その体調不良って……薬で治るんですか?」
「え……?」

戸惑っている間に、彼はずいっと玄関に入ってそのままドアをガチャリと閉めてしまった。

「何するの!?」

驚く私を、射抜くような目で見つめる。
その目線を逸らす事ができず、私は息をのんだ。

「先輩に必要なのって、薬じゃないんじゃないですか?」
「え……?」

そのまま私は彼に抱きすくめられていた。
スーツから嫌味のない香水の香りがする。
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