Z 0 0 Ⅱ
「ケセザルっていうサルだ。あんなふうにいつも暗いところにいて、人前には滅多に出てこない。臆病だけどなかなか面白いやつだよ」
「お、大きくないですか……っ」
「ああ……そうだな」
そう言ってラビは、ちらりと茅野を見た。
そしてケセザルの真ん丸い目をまた見る。
「茅野と同じくらいはあるかな」
「……びっくりした」
自分と同じ大きさの、しかし目は茅野の握り拳ほどもあるサルの姿を想像して、茅野はわずかに目を見開いた。
そして、自分の手が未だラビの袖を握ったままなことに気付いて、慌てて手を離す。
なんだかこの熱帯のゾーンに来てから、取り乱すことばかりだ。
さっきの影はケセザルの姿だったのだろうかと、ふと考える。
だが、あの影はそれほどの大きさはなかったように思える。
ラビが、再び茅野の注意を引いた。
「ほら、こいつはわりと安全だ」
いつのまにか、近くの木から降りてきていたらしい。
ラビのキャスケットに掴まって肩に飛び移るそれは、小さな生き物だった。
こんな動物は、このジャングルに入ってからはじめて目にしたと言っても過言ではない。
茅野はわずかに目を輝かせた。