Z 0 0 Ⅱ

理屈がさっぱりわからなくったって、青と緑に分かれた湖は、不思議で綺麗で、神秘的な光景だ。

相変わらずの無表情ではあるがすっかり見とれている茅野に、ラビが口許だけで笑う。


「気に入った?」
「すごいです、よくわかんないけど、すごい」
「お前、意外と顔に出るんだな。すごい楽しそうな顔してる」


茅野は体を横に向けて湖面の境界線を眺めていたが、そのままの表情で、ラビに振り返った。
ぱち、と瞬きをして、言う。


「生まれてはじめて言われました」
「え、うそ」
「なに考えてるかわかんないって、昔っからずっと」
「そうなのか? こんなにわかりやすいのに?」


ラビが前髪の下で、眉を動かしたのが見えた。
黒縁の眼鏡を自然な動作で上げるのを目で追っていたら、視線がぶつかった。
レンズ越しに目が細められるのを見てしまって、なんとなく、目を逸らす。

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