Z 0 0 Ⅱ

「ラビさんも、なに考えてるのかよくわからないですよね」
「俺?」


茅野ほどではないが、ラビだって表情豊かなほうではない。
わかりやすい笑顔を見せているのは動物に対してだけだし、言葉遣いもあまり柔らかくないし、よく喋るのも動物や園について話している時だけだ。
愛想はそれほどないし、体が大きいので威圧感すらある。

茅野は人の感情を汲み取るのが苦手なほうだ。
自分が表に出さないタイプだからといって、同じような人の考えを読み取ることに長けているというわけでは、決してない。

ラビも同じで、茅野のことがわかるからといって、自分のこともわかりやすいと思っているわけではないようだ。
やはり平然とした表情で、言った。


「ああ……よく言われる」
「あ、そうなんですか」
「まあ、特に何か考えてるわけでも……」
「ラビさん、動物のことばっかり考えてそう」
「間違ってはないな」


感情表現の応酬のほとんどないやりとりをして、ラビが背後を振り向いて、言った。
茅野には正面に見えている景色である。

それは、確かに熱帯のジャングルだった。


「ついたぞ」

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