気まぐれ王子とサル女


千夏は少し間をあけて

「...うん」

と小さな声で言いながらうなづいた。




俺は「今までありがとな。」と言って
その場を去り、
ため息を1回。


千夏が泣いていた姿が
脳裏に浮かぶ


そういえば
今までななには何度も泣かしてきたけど
千夏を泣かせたことはなかったな。

千夏が泣いているときは
俺がいつもそばにいた。


でも、ななが泣いたときは?

ななが泣いたとき
誰がそばにいるんだ?


そんなことを考えると
これまで俺の気分によって
振り回してきたななに
申し訳なくなる…



ななを傷つけたとき
そばにいる奴はいない。

俺はただただ
ななを傷つけてばかり

それなのにあいつは
翌日には何事もなかったかのような
振る舞いを見せる。



確かに千夏と付き合ってる時
ななにかまいすぎた部分もあるけど
俺は何一つななの手助けなんか
できていなく


「俺って千夏にもななにも
中途半端なことをしてきたんだな」


その日の家までの帰路は
いつもよりもずっと長く感じ
足取りも重かった









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