猫を撫でる。



美梨は潔癖性気味なのに、涼太の体臭が染み込んだ薄い布団は嫌ではなかった。




それから、美梨は土日の休みを、
涼太の部屋で過ごすようになった。

家に固定電話はあったけれど、夫の和臣は美梨の携帯に連絡してくるので、
家にいなくても大丈夫だった。





石垣島に行ったのは、付き合いだして三週間後のことだ。

涼太は、石垣島への出張に同行しないかと美梨を誘った。


美梨は迷いながらも断らなかった。


行ったことのない南国の石垣島で涼太と過ごしたかったからだ。


和臣には友達と石垣島に旅行に行くと電話で伝えた。


和臣は「気をつけて、楽しんでこいよ」と電話口で言った。


美梨は少し胸が痛んだが、涼太と旅行に行ける事の喜びの方が大きかった。


新入りのパートの分際で、3日も休暇を取るのは勇気が要ったが、山口にいる夫を訪ねる、と嘘をついた。



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