猫を撫でる。
涼太と美梨が選んだ宿は旅館だった。
涼太は布団派だ。
旅行のお金を出すのは涼太なので、一応美梨は遠慮したつもりだ。
二人に割り当てられた部屋は、8畳
ほどの和室で、広縁に籐のテーブルに
二脚の椅子が置かれ、二人なら充分な広さだった。
二階の窓からは、静かな芦ノ湖と
雲に覆われた山並みが見える。
「せっかく来られたのに、
ちょっと残念でしたねえ」
仲居はお茶を淹れながら、そう言った
あと去った。
涼太は、窓からの景色を眺める美梨に
近づき、顔を近付ける。
美梨は顔を背けた。
「えっ、キスもダメなの?」
涼太が驚いたように言った。
「当たり前でしょ。
友達としないでしょ」
美梨が笑いながら言うと
「俺はしたかったら友達ともするよ」
涼太は屁理屈を言った。
涼太が乗り物のなかでも芦ノ湖でも、ずっと美梨と手を繋ぎたい素振りをみせていた。
それに美梨は気が付いていたが、
わざと知らん顔していた。
(中学生みたい…)
美梨はくすり、と笑う。