EVER BLUE
それから数十分、ピンポーンと鳴ったインターフォンに、ちょうど洗濯物を干し終えてカゴを片手にした晴人は首を傾げた。
日曜日の午前中から無遠慮に訪ねてくる人物など、恵介くらいしか思い浮かばない。けれどその恵介は、今仕事中のはずで。無闇に出るなと言い付けているだけに千彩はモニターのボタンを押してはいないけれど、同じように首を傾げていた。
「けーちゃん?」
「ちゃうやろ。あいつは仕事中や」
「じゃあ誰?」
「さぁな」
ポンポンと千彩の頭を撫でてカゴを渡し、晴人はモニターのボタンを押した。
「ハルさん、ヒカルっす」
躊躇いがちに出された言葉に「おぉ」と短く返事をし、晴人はオートロックを解除した。そして、カゴを置いて戻って来た千彩に「龍二のパパが来たわ」と告げ、聖奈と龍二を呼び戻すように言い付けた。
「迎えに行ってくる」
「あかん。電話せぇ」
出かけに聖奈には千彩の携帯を持たせてある。その返事に些か不満げにした千彩だけれど、晴人の言葉に従わないはずがない。手渡された携帯を受け取り、渋々自分の携帯に電話をかけた。
そんな時ちょうど玄関のチャイムが鳴り、昨夜よりも小奇麗に身なりを整えたヒカルが三木家に足を踏み入れた。
「おはようさん」
「どうもっす。マジでいいマンション住んでるじゃないっすか」
「まぁな」
軽く挨拶を交わし、男二人は無言でリビングへ入る。キョロキョロと辺りを見渡すヒカルをソファに座るように促し、晴人は居心地の悪そうにしている千彩を呼び寄せた。
「ヒカル、紹介するわ。これ、俺の嫁さんの千彩」
「どうもっす。ヒカルです」
「千彩、これが龍二のパパや」
「ちさです。初めまして」
ペコリと頭を下げる千彩を見て、ヒカルは「ん?」と小さく首を傾げた。
自分の記憶が正しければ、「ハル」というアーティストは、リエやMARIなどの綺麗どころばかりと噂になっていた。そのどれもを「遊びだ」と言わんばかりにあっさりと捨て、また新しい女に乗り換えていた女癖の悪い男だったような気がする。
けれど、「嫁だ」と紹介された女性は、そんな「ハル」とは無縁の世界に生きてきたような女性で。どう頑張っても二十歳そこそこの千彩の容姿は、そんなヒカルの思考をより一層難解なものにした。
「まぁ…思うことは色々あるやろけど、取り敢えずうちの嫁さんは30になるからな」
「え?」
「何も言うな。もう聞き飽きた」
千彩と知り合った頃、恵介を初め仲間達や自分の身内にまで散々ロリコン扱いをされたのだ。それから月日は流れたにせよ、初めて千彩を紹介する人物が何を言いたいかくらいは晴人にもわかる。
「俺はもうあの頃とはちゃうんや」
「変わったんっすね。奥さんのおかげっすか?」
「せやな。こいつが俺を変えた。んで、娘が生まれたことで更に変わった」
「そうっすかー」
敢えてツッコまない方がいいかもしれない。と、ヒカルが視線を逸らした時、インターフォンがピンポーンと来客を告げた。
「セナやろ。千彩、開けたって」
「うん!」
「こら!ちゃんと確認せんか!」
「あっ。ごめんなさい」
何の確認もせずに解錠ボタンを押そうとする千彩を叱り、晴人は大きく息を吐く。そんな晴人の様子に、ヒカルがくくっと小さな笑い声を洩らした。
「大変っすね、ハルさん」
「まぁな」
いくら言い聞かせても、千彩の無防備は一向に改善される気配がなくて。だから一人で外に出すことも出来ないし、家に置いておくことも本当ならば避けたい。けれども自分は仕事で家を空けるわけで。聖奈が学校に行っている間だけでも事務所に連れていこうか…と、何度思ったことかしれない。
「はる、ちーちゃん、ただいまー」
「とーちゃん、ちーちゃん、ただいまー!」
玄関から聞こえる二人の子供の声は、そんな晴人の重い気分を晴れさせるには十分なほどに元気な声だった。
「おかえり。龍二、とーちゃん来てるぞ」
「えっ!?とーちゃん!?」
晴人の言葉に、龍二が慌てて駆けて来る。それに続いて来た聖奈は、ヒカルの姿を見てペコリと頭を下げた。
「初めまして、りゅーちゃんのパパ。三木聖奈です」
「え?はい。初めまして」
釣られて頭を下げたヒカルだけれど、自分の息子に対してはどう接していいのかわからない。同じように戸惑う龍二に手招きをし、晴人はポンポンと自分の隣を叩いた。
「ここ座れ」
「…うん」
「セナ、千彩と部屋行っとけ」
「はい。さっ、ちーちゃん行きましょう」
「え?ちさも…」
「ちーちゃんがいると話が進まないんです。はるの言う通りにしてください」
「うん…わかった」
渋々聖奈に手を引かれる千彩は、やはり龍二のことが気になるようで。何度も振り返るのだけれど、晴人が「おいで」と呼んでくれないものだから、諦めてその場を去るしかなかった。
「何か可哀相っすよ、奥さん」
「しゃあない。あいつがおったらホンマに話が進まんねや」
ふぅっと大きく息を吐く晴人は、極力こんな形はとりたくないと日頃から思っている。世間知らずの千彩には、出来るだけ多くのことを学ばせたい。だから恵介との会話が途中で遮られても怒ることもなく、二人で根気よく付き合っている。
けれど、それとこれとは話が別で。
龍二と似た境遇だった千彩からしてみれば、ヒカルは完全に悪者だ。この年になってもどこかのパンのヒーローがお気に入りの千彩は、「愛と勇気」を武器にヒカルと戦おうとすることだろう。そうなると話がややこしくなる。
仕方がない。と、仕事終りの恵介にいつもの手土産を頼むことでご機嫌取りをすると決め、晴人はちょこんと座る龍二の背中をパシッと軽く叩いた。
「とーちゃん…」
「おう、龍二」
「とーちゃん…仕事は?」
「休みだ」
「…そっか」
普段からそうそう父親のちゃんとした姿を見ることがない龍二にとって、小奇麗に身なりを整えたヒカルはまるで別人のように見えて。まずはそれに戸惑い、次にどうやら知り合いらしい晴人とヒカルの関係に戸惑った。何をどう伝えていいのかわからない龍二はそのまま俯き、小さな手でギュッと晴人のズボンを掴む。
「んで、どないするんや?龍二」
「あー…そうっすね」
「俺と嫁で育ててもええんか?」
「それなんっすけど…」
昨夜そう告げた時点で、どんな答えが返ってくるのかはわかっていた。けれど敢えてそれを追求せず、一晩龍二を預かったのだ。考えていたよりも早かったけれど、いずれヒカルがここへやって来ることも、これからどうしていくつもりなのかも晴人にはわかっていた。
「俺、とーちゃんと暮らす」
口ごもって俯きかけたヒカルは、龍二の言葉にハッと顔を上げる。けれど、その言葉が自分に向けられたものではないことに気付き、再び視線を落とした。
「俺…とーちゃんと、ちーちゃんと、セナと暮らす」
「って言うとるぞ、お前の息子は」
「…そっか。そうだよな」
小さく紡がれたヒカルの言葉に、龍二はハッと息を呑んだ。
父が嫌いなわけではない。寧ろ、自分には父しかいないと思って今まで生きてきた。仕事に行くのも自分のため、帰ってこれないのも自分のため。そう思って今まで耐えてきたのだ。そんな自分がいなくなれば、父はもっと楽に生きれるはずだ。そう思って言ったはずなのに、目の前の父は今にも泣き出しそうな顔をしていて。こんな悲しい顔をさせたくて言ったわけじゃないのに!と、言葉にならない思いで龍二の胸はいっぱいになった。
「とーちゃん!違う!とーちゃん!」
それが龍二に出せた精一杯の言葉。
泣き出した龍二の頭をわしゃわしゃと撫で、晴人は改めてヒカルに向き合った。
「お前の息子は、とーちゃんが大好きやってよ」
「いや、だって…」
「子供はな、どんなでも親が大好きなんや。うちの嫁さんだって、育児放棄してた母親が大好きやった言うてたわ」
聖奈が生まれてすぐの頃、晴人は一度だけ千彩に尋ねたことがある。自分の母親を恨んでいないのか?と。その時の千彩は、目を丸くして「何で?ちさママ大好きやったよ」と言っていた。
「母親がおらんのやったら尚のことやろ。龍二にはお前しかおらんやないか」
「…はい」
「別に一人で何もかも背負い込め言うてない。俺らも助けたるから」
「…すいません」
小さな声で返事をしながら歯を食いしばるヒカルは、今にも泣き出しそうで。それを泣きながらも心配げに見つめている龍二を立たせ、晴人はポンッとその小さな背中を押してやった。
「とーちゃんが帰ってこいってよ、龍二」
「とー…ちゃん。とーちゃん!」
駆け寄った龍二は、必死にヒカルにしがみついて何度も「とーちゃん」と繰り返した。そんな親子を腕組みをしながら見つめていた晴人は、ふと後方の気配に気付き、振り向きもせず声をかけた。
「どないした?セナ」
「ちーちゃんが泣き出しました」
「あーあ。ちょっと行って来るからここ頼むわ」
「…はい」
千彩が泣き出し、自分では宥めきれないと判断した聖奈は、仕方なく晴人を呼びにリビングへと来た。まさかこんな場面を任されるとは思ってもみず、抱き合って泣いている親子を横目にちょこんとソファに腰かけて思った。大人は色々大変ですね、と。
日曜日の午前中から無遠慮に訪ねてくる人物など、恵介くらいしか思い浮かばない。けれどその恵介は、今仕事中のはずで。無闇に出るなと言い付けているだけに千彩はモニターのボタンを押してはいないけれど、同じように首を傾げていた。
「けーちゃん?」
「ちゃうやろ。あいつは仕事中や」
「じゃあ誰?」
「さぁな」
ポンポンと千彩の頭を撫でてカゴを渡し、晴人はモニターのボタンを押した。
「ハルさん、ヒカルっす」
躊躇いがちに出された言葉に「おぉ」と短く返事をし、晴人はオートロックを解除した。そして、カゴを置いて戻って来た千彩に「龍二のパパが来たわ」と告げ、聖奈と龍二を呼び戻すように言い付けた。
「迎えに行ってくる」
「あかん。電話せぇ」
出かけに聖奈には千彩の携帯を持たせてある。その返事に些か不満げにした千彩だけれど、晴人の言葉に従わないはずがない。手渡された携帯を受け取り、渋々自分の携帯に電話をかけた。
そんな時ちょうど玄関のチャイムが鳴り、昨夜よりも小奇麗に身なりを整えたヒカルが三木家に足を踏み入れた。
「おはようさん」
「どうもっす。マジでいいマンション住んでるじゃないっすか」
「まぁな」
軽く挨拶を交わし、男二人は無言でリビングへ入る。キョロキョロと辺りを見渡すヒカルをソファに座るように促し、晴人は居心地の悪そうにしている千彩を呼び寄せた。
「ヒカル、紹介するわ。これ、俺の嫁さんの千彩」
「どうもっす。ヒカルです」
「千彩、これが龍二のパパや」
「ちさです。初めまして」
ペコリと頭を下げる千彩を見て、ヒカルは「ん?」と小さく首を傾げた。
自分の記憶が正しければ、「ハル」というアーティストは、リエやMARIなどの綺麗どころばかりと噂になっていた。そのどれもを「遊びだ」と言わんばかりにあっさりと捨て、また新しい女に乗り換えていた女癖の悪い男だったような気がする。
けれど、「嫁だ」と紹介された女性は、そんな「ハル」とは無縁の世界に生きてきたような女性で。どう頑張っても二十歳そこそこの千彩の容姿は、そんなヒカルの思考をより一層難解なものにした。
「まぁ…思うことは色々あるやろけど、取り敢えずうちの嫁さんは30になるからな」
「え?」
「何も言うな。もう聞き飽きた」
千彩と知り合った頃、恵介を初め仲間達や自分の身内にまで散々ロリコン扱いをされたのだ。それから月日は流れたにせよ、初めて千彩を紹介する人物が何を言いたいかくらいは晴人にもわかる。
「俺はもうあの頃とはちゃうんや」
「変わったんっすね。奥さんのおかげっすか?」
「せやな。こいつが俺を変えた。んで、娘が生まれたことで更に変わった」
「そうっすかー」
敢えてツッコまない方がいいかもしれない。と、ヒカルが視線を逸らした時、インターフォンがピンポーンと来客を告げた。
「セナやろ。千彩、開けたって」
「うん!」
「こら!ちゃんと確認せんか!」
「あっ。ごめんなさい」
何の確認もせずに解錠ボタンを押そうとする千彩を叱り、晴人は大きく息を吐く。そんな晴人の様子に、ヒカルがくくっと小さな笑い声を洩らした。
「大変っすね、ハルさん」
「まぁな」
いくら言い聞かせても、千彩の無防備は一向に改善される気配がなくて。だから一人で外に出すことも出来ないし、家に置いておくことも本当ならば避けたい。けれども自分は仕事で家を空けるわけで。聖奈が学校に行っている間だけでも事務所に連れていこうか…と、何度思ったことかしれない。
「はる、ちーちゃん、ただいまー」
「とーちゃん、ちーちゃん、ただいまー!」
玄関から聞こえる二人の子供の声は、そんな晴人の重い気分を晴れさせるには十分なほどに元気な声だった。
「おかえり。龍二、とーちゃん来てるぞ」
「えっ!?とーちゃん!?」
晴人の言葉に、龍二が慌てて駆けて来る。それに続いて来た聖奈は、ヒカルの姿を見てペコリと頭を下げた。
「初めまして、りゅーちゃんのパパ。三木聖奈です」
「え?はい。初めまして」
釣られて頭を下げたヒカルだけれど、自分の息子に対してはどう接していいのかわからない。同じように戸惑う龍二に手招きをし、晴人はポンポンと自分の隣を叩いた。
「ここ座れ」
「…うん」
「セナ、千彩と部屋行っとけ」
「はい。さっ、ちーちゃん行きましょう」
「え?ちさも…」
「ちーちゃんがいると話が進まないんです。はるの言う通りにしてください」
「うん…わかった」
渋々聖奈に手を引かれる千彩は、やはり龍二のことが気になるようで。何度も振り返るのだけれど、晴人が「おいで」と呼んでくれないものだから、諦めてその場を去るしかなかった。
「何か可哀相っすよ、奥さん」
「しゃあない。あいつがおったらホンマに話が進まんねや」
ふぅっと大きく息を吐く晴人は、極力こんな形はとりたくないと日頃から思っている。世間知らずの千彩には、出来るだけ多くのことを学ばせたい。だから恵介との会話が途中で遮られても怒ることもなく、二人で根気よく付き合っている。
けれど、それとこれとは話が別で。
龍二と似た境遇だった千彩からしてみれば、ヒカルは完全に悪者だ。この年になってもどこかのパンのヒーローがお気に入りの千彩は、「愛と勇気」を武器にヒカルと戦おうとすることだろう。そうなると話がややこしくなる。
仕方がない。と、仕事終りの恵介にいつもの手土産を頼むことでご機嫌取りをすると決め、晴人はちょこんと座る龍二の背中をパシッと軽く叩いた。
「とーちゃん…」
「おう、龍二」
「とーちゃん…仕事は?」
「休みだ」
「…そっか」
普段からそうそう父親のちゃんとした姿を見ることがない龍二にとって、小奇麗に身なりを整えたヒカルはまるで別人のように見えて。まずはそれに戸惑い、次にどうやら知り合いらしい晴人とヒカルの関係に戸惑った。何をどう伝えていいのかわからない龍二はそのまま俯き、小さな手でギュッと晴人のズボンを掴む。
「んで、どないするんや?龍二」
「あー…そうっすね」
「俺と嫁で育ててもええんか?」
「それなんっすけど…」
昨夜そう告げた時点で、どんな答えが返ってくるのかはわかっていた。けれど敢えてそれを追求せず、一晩龍二を預かったのだ。考えていたよりも早かったけれど、いずれヒカルがここへやって来ることも、これからどうしていくつもりなのかも晴人にはわかっていた。
「俺、とーちゃんと暮らす」
口ごもって俯きかけたヒカルは、龍二の言葉にハッと顔を上げる。けれど、その言葉が自分に向けられたものではないことに気付き、再び視線を落とした。
「俺…とーちゃんと、ちーちゃんと、セナと暮らす」
「って言うとるぞ、お前の息子は」
「…そっか。そうだよな」
小さく紡がれたヒカルの言葉に、龍二はハッと息を呑んだ。
父が嫌いなわけではない。寧ろ、自分には父しかいないと思って今まで生きてきた。仕事に行くのも自分のため、帰ってこれないのも自分のため。そう思って今まで耐えてきたのだ。そんな自分がいなくなれば、父はもっと楽に生きれるはずだ。そう思って言ったはずなのに、目の前の父は今にも泣き出しそうな顔をしていて。こんな悲しい顔をさせたくて言ったわけじゃないのに!と、言葉にならない思いで龍二の胸はいっぱいになった。
「とーちゃん!違う!とーちゃん!」
それが龍二に出せた精一杯の言葉。
泣き出した龍二の頭をわしゃわしゃと撫で、晴人は改めてヒカルに向き合った。
「お前の息子は、とーちゃんが大好きやってよ」
「いや、だって…」
「子供はな、どんなでも親が大好きなんや。うちの嫁さんだって、育児放棄してた母親が大好きやった言うてたわ」
聖奈が生まれてすぐの頃、晴人は一度だけ千彩に尋ねたことがある。自分の母親を恨んでいないのか?と。その時の千彩は、目を丸くして「何で?ちさママ大好きやったよ」と言っていた。
「母親がおらんのやったら尚のことやろ。龍二にはお前しかおらんやないか」
「…はい」
「別に一人で何もかも背負い込め言うてない。俺らも助けたるから」
「…すいません」
小さな声で返事をしながら歯を食いしばるヒカルは、今にも泣き出しそうで。それを泣きながらも心配げに見つめている龍二を立たせ、晴人はポンッとその小さな背中を押してやった。
「とーちゃんが帰ってこいってよ、龍二」
「とー…ちゃん。とーちゃん!」
駆け寄った龍二は、必死にヒカルにしがみついて何度も「とーちゃん」と繰り返した。そんな親子を腕組みをしながら見つめていた晴人は、ふと後方の気配に気付き、振り向きもせず声をかけた。
「どないした?セナ」
「ちーちゃんが泣き出しました」
「あーあ。ちょっと行って来るからここ頼むわ」
「…はい」
千彩が泣き出し、自分では宥めきれないと判断した聖奈は、仕方なく晴人を呼びにリビングへと来た。まさかこんな場面を任されるとは思ってもみず、抱き合って泣いている親子を横目にちょこんとソファに腰かけて思った。大人は色々大変ですね、と。