君に逢いたくて~最後の手紙~
お茶をとってきた俺は、


自分の部屋の前で深呼吸した。


…ふう。


よし!行くか…。


―ガチャ


俺はさっき座っていた場所に


また座った。


そしてお茶をテーブルに置いた。


「ありがとう」


そう言って微笑む梨衣奈。


…可愛い。


「手、出して?」


「え?」


梨衣奈はかわいらしく首をかしげる。


「いいから」


「うん」


差し出された梨衣奈の手をそっと握る。


「え…どうしたの?急に」


梨衣奈は少しびっくりしている。


「目、つむって?」


俺が優しく言うと、梨衣奈は


何も言わずに目をつむった。


―スッ


「今の音何?」


「なんでもないよ。
…目絶対開けないでね」


「うん」


そして俺は、梨衣奈の細い指に


指輪をスゥーとはめた。


「目、開けていいよ」


梨衣奈はゆっくりと、


目を開けた。


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