TABOO Ⅸ~女の顔~


ふいに人の気配を感じ、反射的に電話を切った。


「悪い、邪魔した?」


「ううん、弟だし!」


ロビーの隅で取り繕うような笑顔を浮かべるあたしに近付いてきた聡が、


「矢吹さんっていい男だな。結婚すんの?」


からかう口調じゃなくそう聞いてきたので、素直に頷いた。


「まだ先だと思うけど…」


答えてから急に沸いてきた実感に落ち着かない気持ちになってると、


「迷ってるんだ」


何故かそう言われ、驚いて首を横に振った。


「違うよ。どうして?」


「オレお前のことすぐわかるんだよな」


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