私を抱いてください
 私の体は床に立ったまま、横たえられることはなかった。

 彼はただ本当に私を抱きしめただけだった。

 耳元でささやかれた優しい「ごめんね」。

 いっそ、幻滅させてくれたのならどんなによかっただろう。


「好きです」


 その言葉を呑みこんで、私は彼の元を去った。

 胸の小鳥は彼への愛の歌を奏でながら、彼の優しい言葉に貫かれて死んでしまった。
 赤い花を咲かすこともなく、花は白のまま小鳥の弔花になってしまった。

 胸に空いた空洞に、小鳥の亡骸を白い花と共に埋葬する。

 きっとそこから、今度こそ赤い花が咲いて小鳥は永遠の愛の歌を唄うから。
 だから私は、彼氏の元に走った。


 彼を振り切って、呑み込んだ言葉を彼氏に伝えるため。
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