ライラックをあなたに…
メイクも着替えも終え、キッチンで簡単な朝食の準備をする。
一颯くんは昨夜遅くまで勉強していた様子。
朝方までスライド式の扉の隙間から灯りが漏れていた。
そんな彼をゆっくり休ませてあげたくて、細心の注意を払ってサラダを作る。
「今日は月曜日だよ?」
「ふぇっ?!」
ゆで卵の殻を剥いていると、突然背後から声が掛かった。
そして、長い腕がスッと伸びて来たかと思うと、
「ルールは守るためにあるんだけど?」
「へ?」
手にしていたゆで卵を取り上げられ、もう片方の手が頭の上にポンと置かれた。
「寿々さんが気を遣うと、俺まで気を遣わないとならないじゃん」
「………ごめん」
彼の優しさがストレートに響く。
思わず、シュンとして項垂れる私。
「で?………何でこんなに早いの?」
現在の時刻、6時を回った所。
会社が8時半始まりなのは昨日伝えてあるから、不思議に思って当然だ。
私はあれこれといい訳を考えてはみたが、結局、彼の視線に降参した。
「…………ごめんなさい」
「答えになって無いけど?」
「…………」