ライラックをあなたに…
ゆで卵をまな板の上に置いた彼は腕組みし、眉間に皺をよせている。
今日は月曜日。
食事の担当は一颯くん。
………怒られても当然だ。
私はそんな彼に気持ちを素直に伝える事にした。
「あのね?」
「……ん」
「あの人と、通勤電車が………被ると思って……」
本当の事を言ったら、私とあの人は同じ電車に乗った事が無い。
いつも、彼は私より1本早い電車に乗っていたから。
でも、もう……時間差を気に掛ける理由は無い。
もしかしたら、待ち伏せされているかもしれないし。
私の考えすぎかもしれないけど、お金の事とか両親への報告とか。
けじめをつけるべき事が山のようにあるのは事実。
逃げたってどうにもならない事は分かってる。
本当なら1日も早く、両親に話さないとならないし。
でも、でも………。
思わず俯いて、奥歯をグッと噛みしめていると、
「ごめん」
「へ?」
「そこまで考えて無かった」
「あっ……ううん、これは私の問題だし」
「いや、俺の配慮が足りなかった。ごめん」
「んッ?!」