ライラックをあなたに…
そんな職場で1カ月が経った頃、急ぎの仕事で休日出勤した土曜日。
彼が設計した図面を複写する為コピー室へ行くと、第二原図(青焼き)用紙が空になっている事に気付き、私は仕方なく用紙を補給する事に。
大きな原図用紙に手間を取られ、早く戻らないと…と焦りながら作業していた。
そこへ、私の帰りが遅い事に気付いた彼が様子を見に姿を現した。
私は彼が来た事に気付かず、必死に大きな用紙を機械にセットしている時、
「どうかしたのか?」
「えっ!?痛ッ…」
突然、背後から声を掛けられ驚いた私は、原図用紙で指先を切ってしまった。
「ごめん、大丈夫?」
彼は慌てて駆け寄り、私の傷口を見て一言。
「はぁ、良かったぁ。大した事なくて」
幸いほんの少し指先を切っただけ。
彼はその傷口を見て安堵し、躊躇うことなく指先を口に含んだ。
そんな彼の予想外の行動に、私の思考がついて来る筈もなく。
私はジンジンと熱を帯びた指先を感じながら、艶めかしい彼の口元に視線を奪われていた。